耐震基準の見直しは必要か?

熊本では、依然余震が続き、震災の被害も広がっているが、建築関係者の中でも、この地震をどう受け止めるか、公式非公式を問わず議論が広がってきている。特に、震度7の地震があまり間を置かずに2度発生し、そのことにより倒壊した建物が多数でた点をどう受け止めるか。

マスコミでは、誰が主張しているのか分からないが、耐震基準を見直すような方向で議論が進みつつあるような報道もあるが、僕個人の意見としては、不要ではないかと思う。

今回の地震では、直接的な死者数は49人、うち家屋の倒壊による死者は37人で、少なくとも20人は旧耐震の建物の倒壊が原因とされている。全壊の住宅数はまだ確定していないが、数千から万といわれる中で、死者が49人というのは発生した時間帯を考えれば非常に少ないといえるのではないか。前震の震度7の地震でも、完全に倒壊してペシャンコになった建物はそれほど多くなかったのかも知れない。いずれにしても、震度7の地震が短期間に2度きてもこの程度の死者数で済んだのは、これまでの基準の見直しなどの成果に他ならない。

住宅の耐震性を定めた建築基準法は、「最低基準」であって、震度6弱程度の地震が来ても、まず大丈夫というレベルに設定している。震度7がくれば新耐震でもある程度は壊れるが、ほぼ倒壊はしない。この倒壊しないというのは確率の問題であって、立地や平面計画によっては、倒壊するものもあるかも知れないが、まあそれは仕方ないでしょう、というレベル。繰り返すが建築基準法は最低基準なのだ。もっと丈夫な家が欲しい方は、それぞれで対応すればよい。あるいはリスクの高い地域では、きめ細やかに最低基準を見直したりして対応すべきだろう。今から耐震基準を見直しても、恩恵を受けるのはこれから家を建てる経済力のある世帯だけで、建設コストも高くなるから、建てられる人は益々少なくなる。むしろストックの対策の重要性が増すだけであって、あまり意味は無いように思う。むしろ、今回の地震でも、最低基準としての新耐震基準はそこそこの性能を発揮したと見るべきではないか。

問題は、大きな地震を受けると耐震性は劣化するということが詳らかになったということだろう。これまでも、地震によって耐震性が低下することは知られていたし、連続的に大きな地震が起こりえることも分かっていた。しかし、そこはちょっとややこしいので、見て見ぬふりをしてきたというのが正直なところではないか。想定外とはそういうこと。それが今回、2日間という短い間隔で起きることによって、想定外では済まされなくなった訳である。そういう意味では、今回は非常にラッキーだったとも言える。二日という間隔で大きな地震が起きたので、多くが避難したままだった。不幸にも自宅に戻られれて本震で家が倒壊して亡くなられた方もおられるが、これが1ヶ月後、二ヶ月後であればどうだっただろうか。もっと多くの方が下敷きになっていたはずである。

このことが示唆するのは、阪神淡路、東日本の地震では、新耐震基準の建物は、大きな被害を受けなかったということになっていて、熊本でもそうであるが、次に耐えられるかどうかはまったく分からないということである。

いま、我々が行わなければならないのは、新耐震の住宅であっても、大きな地震を経験した建物は、もう一度検査をするなどして耐震性を確認し、必要応じて補強をする。そのことを、システムとして粛々と行える体制を作り上げることではないかと思う。

また、震度6以上の地震がくれば、旧耐震の建物は倒壊する可能性が高いことは既に広く知られている。そういう住宅に住み続ける方と、不幸にも新耐震、あるいは耐震補強をしたにも関わらず倒壊してしまった方とでは、分けて考える必要があるのではないか。地震が来れば倒壊すると分かっていて住み続ける方に、やはり倒壊したのでということで、何か支援する必要がはたしてあるのだろうか。

貧しいので引っ越しも改修もできないという方もいるだろう。そういう方には福祉の観点から、公的な賃貸住宅を提供したり、引っ越し費用を支援したりというのは、十分にありえるし検討すべきだ。かりにそれでも住み続け、被災したとすれば、それはもう自己責任としかいいようがない。

次の東京直下の地震が起きたとき、東日本や熊本でやった、あるいはやるような支援が東京の被災者にできるだろうか? 財政的にも到底そんなことはできないのではないか。東京直下、東海・東南海がいつおきてもおかしくないという状況で、なぜ東京や東海エリアで、旧耐震に住んでいる方の引っ越しブームが起きないのか不思議でならない。すこし荒っぽいかも知れないが、旧耐震の家が倒壊しても、支援や見舞金、義援金は支払いませんと宣言し、お金のある人には自主的な補強や建て替えを促し、無い人には公的な住宅への引っ越しを勧めるというようなことを今すぐにはじめるべきではないか。

 

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